台風が日本に近づくと、気象情報で、
「中心気圧は何ヘクトパスカルです」
といった発表が行われます。
そもそも、このヘクトパスカルとは一体何のことでしょうか?
また、かつて気圧の単位には「ミリバール」が使用されていましたが、「ヘクトパスカル」に変更されたのは、どういった理由からでしょうか。
今回は、この二つの謎について明らかにしていきます。
ヘクトパスカルとは?台風や気圧の単位がミリバールから変わった理由
ヘクトパスカルとは?
ヘクトパスカルを解説する前に、まず”パスカル”について理解していきましょう。
パスカルとは圧力の単位で、記号は [Pa] です。
圧力とは、単位面積あたりに働く力のことで、
\( 圧力[Pa] = \displaystyle \frac{力[N]}{面積[m^2]} \)
という式で計算することができます。
このパスカルという単位は、フランスの物理学者、ブレーズ・パスカルにちなんだものです。
「人間は考える葦(あし)である」
といった名言や、二項定理の「パスカルの三角形」、
「流体に加わった圧力は他のすべての部分に同じ大きさで伝わる(パスカルの原理)」
で有名な人物ですね。
そして、パスカルの前に付いている“ヘクト”は単位の接頭辞で“100倍”を表しています。
小学校の時、面積で”ヘクタール”という単位があったのを覚えているでしょうか。
\( 1[ha] = 100[a] \)で、”ヘクト[h]”+”アール[a]”で”ヘクタール[ha]”です。
これは、圧力の単位にも同じ関係が当てはまりますので、
\( 1[hPa] = 100[Pa] \)
となります。
このように、”パスカル”はあくまで圧力の単位なのですが、
“ヘクトパスカル”が気圧(空気の圧力)ぐらいでしか用いられないため、
「ヘクトパスカル=気圧の単位」と考えて差し支えありません。
なぜ気圧の単位がヘクトパスカルからミリバールに変わったのか?
次に、気圧の単位が”ミリバール”から”ヘクトパスカル”に変わった理由を見ていきましょう。
これを理解するには、「国際単位系(SI)」について知る必要があります。
国際単位系(SI)
国際単位系(SI)とは、メートル法の後継として、国際的に定められた単位系のことです。
SIでは、
(2) 質量 → キログラム[kg]
(3) 時間 → 秒[s]
(4) 電流 → アンペア[A]
(5) 熱力学温度 → ケルビン[K]
(6) 物質量 → モル[mol]
(7) 光度 → カンデラ[cd]
の七つを基本単位とし、これらの組み合わせで色々な単位を表現します。
ミリバールとは?
“バール”は”パスカル”と同じく圧力の単位で、記号は[bar]です。
バールは、1[atm]=1[気圧]にできるだけ近い値になるように定められており、
\( 1[atm] = 1.01325[bar] \)
となっています。
このバールに”1000分の1″を表す接頭辞“ミリ[m]”を付けたものが“ミリバール[mbar]”であり、
\( 1[atm] = 1.01325[bar] = 1013.25[mbar] \)
という関係が成り立つわけです。
\( 1[g] = 1000[mg] \)
と同じですね。
気圧の単位が変わった理由
それで、なぜ気圧の単位が”ミリバール”から”ヘクトパスカル”に変わったかというと、
「計量法」という計量の基準を定めた法律が改正され、1992年12月より、国際単位系(SI)の”パスカル”を使用することになったからです。
SIでは、
・キロ[k] = \(10^3\)
・メガ[M] = \(10^6\)
・ギガ[G] = \(10^9\)
などの「10の、3の倍数乗」の接頭辞を使うことを推奨しています。
そのため、気圧の単位も、初めは”キロパスカル[kPa]”を採用する予定でした。
ところが、
\( 1[atm] = 1013.25[mbar] = 101.325[kPa] \)
となるので、[kPa]を使おうとすると、これまで用いてきた[mbar]をすべて10で割らなければならなくなります。
「同じ数値を使い続けたい」
という気象関係者からの要望もあり、”ミリバール[mbar]”とまったく同じ単位である”ヘクトパスカル[hPa」”が採用されたのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
これまでの話をまとめると、
ということです。
これからは、天気予報で”ヘクトパスカル”が出てきても理解できますね。
最後までお読みくださり、ありがとうございました!
おすすめ記事
コメント
はじめまして。マックです。
hPaとても勉強になりました。
紙ヒコーキも気になりましたので読みます♪
マックさん、コメントありがとうございます!
そう言っていただけて嬉しいです。
紙ヒコーキもぜひ作って飛ばしてみてください。
ORIONやスフィンクスは、めちゃくちゃ飛びますよ!