歴史の教科書の中で、
「この土器は何年前に使われていた」
とか、
「この生物は何年前に生存していた」
といった記述がありますよね。
ですが、どうしてそんなことが分かったのでしょうか?
実は、
「放射性炭素年代測定法」
という方法を使って、調べることができたのですが、
今回はその測定法の基となる、
「放射性同位体とは何か?」
について、簡単に説明したいと思います。
放射性同位体とは何かを簡単に説明。炭素年代測定からα線まで。
放射性同位体とは
同じ種類の元素でも、原子核をつくる中性子の数が異なる原子を「同位体(アイソトープ)」といいます。
・原子の構造や質量数がわからない方はこちら
→ 酢酸の分子量の求め方。化学式から計算する方法をわかりやすく解説
この同位体のうち、原子核が不安定なために崩壊し、放射線を出すものが「放射性同位体(ラジオアイソトープ)」です。
放射性同位体の例としては、
などが知られています。
α崩壊、β崩壊、γ崩壊
この放射性同位体の崩壊には、
α崩壊、β崩壊、γ崩壊
の3種類があります。
それぞれについて見ていきましょう。
α崩壊とは
α崩壊とは、原子核がα線(ヘリウムの原子核)を放出して崩壊することです。
ヘリウムの原子核は、陽子2個、中性子2個でできていますから、
原子がα崩壊すると、その原子の原子番号は2、質量数は4減ることになります。
原子番号が変わりますので、崩壊後は当然別の原子に変化します。
具体例として、ウラン238の例を示しておきます。
$$ {^{238}_{92}U} \rightarrow {^{234}_{90}Th} + {^{4}_{2}He^{2+}} $$
ちなみに、Th はトリウムですね。
α崩壊は、一つの原子が二つの原子に分かれる核分裂反応ともいえます。
β崩壊とは
β崩壊とは、中性子が陽子に変化する際、β線(電子)が放出される崩壊のことです。
中性子が陽子に変化しますので、原子番号は1増えますが、質量数は同じです。
こちらも具体例として、炭素14の例を示しておきます。
$$ {^{14}_{6}C} \rightarrow {^{14}_{7}N} + {e^{-}} $$
γ崩壊とは
γ崩壊とは、励起した(エネルギーが高まった)原子核がγ線を放出して崩壊することです。
γ崩壊では、原子番号も質量数も変わらないのが特徴です。
放射性同位体の利用例
次に、放射性同位体が私たちの生活で、どのように利用されているか見ていきましょう。
放射性炭素年代測定法
先ほど、炭素14はβ崩壊をして窒素14に変わることをお話しました。
この炭素14は、自然界に存在する炭素のうち、
「8300億個に1個」
という非常にわずかな割合でしか存在せず、この割合は大昔から現在までほぼ一定です。
地球上の動植物は、光合成をしたり、食物を摂ったりして、この炭素14を体の中に取り込んでいますが、
命を失うと、それ以上取り入れられなくなり、
β崩壊によって体内の炭素14が徐々に減っていきます。
具体的に炭素14は、約5730年で半分の量になるため(半減期)、体内に残っている炭素14の割合を調べることで、
その生物が何年前に死んだのかが分かるのです。
医療分野での利用
放射線の医療分野での利用例としては、レントゲンがあります。
これは、物を通り抜ける力(透過力)の強いX線の性質を利用し、
体内を調べるものです。
また、レントゲンは仏像内部を撮ることで、文化財の保存・修理にも役立っています。
もう一つは、がんの放射線治療です。
がん細胞に放射線を当てることでDNAを破壊し、がん細胞が増えるのを抑えたり、小さくしたりします。
放射線治療のメリットとしては、手術によって臓器を取り除くことなく、
患部を直接治療できることが挙げられます。
その他の利用例
その他、放射線は以下のような場所で利用されています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
放射性同位体がどのようなもので、私たちの暮らしにどう役立っているのか、
ご理解いただけたと思います。
どのような科学でも、それを正しく利用すれば人々に恩恵をもたらし、
悪用すれば人類の破滅を招きます。
放射線も安全性に十分注意したうえで、上手に活用していくことが大切なのではないでしょうか。
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