将棋のタイトルの違いをわかりやすく解説する記事の後編です。
前回の記事をまだ読まれていない方は、こちらからどうぞ。
・将棋のタイトルの違いをわかりやすく解説。名人戦と竜王戦と叡王戦。
今回は、王位・王座・棋王・王将・棋聖の5つのタイトルについて説明します。
タイトルの数が多いので、前置きは短めにして、早速本題に移りたいと思います。
将棋の各タイトルの違い
王位戦
王位戦はブロック紙3社連合*1が主催しているタイトル戦です。
3社連合とは、北海道新聞社、中日新聞社、西日本新聞社の3社に神戸新聞と徳島新聞を加えた形です。
(「5社じゃねーか」というツッコミは禁止ww)
この3社連合は、1953~1958年までは、「三社杯B級選抜トーナメント*2」を開催していましたが、
1960年に、産経新聞が主催していた「早指し王位決定戦」を含めて発展的に解消され、王位戦が誕生しました。
王位戦の方式は、予選、挑戦者決定リーグ、挑戦者決定戦、王位戦七番勝負からなります。
予選を免除されるのは、前期の決定リーグで2位以上になった4名のみであるため、
タイトルホルダーやA級棋士もしばしば予選に登場します。
そのため、他の棋戦より予選段階での番狂わせが多いのが特徴です。
*1 ブロック紙 … 全国紙のように日本中をカバーしていないが、一般的な地方紙よりは広い地域にまたがっている新聞のこと。
*2 三社杯B級選抜トーナメント … この棋戦には、タイトルホルダーや順位戦のA級棋士は参加しなかった。
王座戦
王座戦は日本経済新聞社が主催しているタイトル戦です。
1953年に発足し、1983年の第31期からタイトル戦に昇格しました。
王座戦の方式は、
からなります。
他の棋戦に比べて女流棋士の参加人数が多いのが特色で、
2014年の第63期では、香川愛生(かがわまなお)女流三段が2名の男性棋士を破り、
3回戦進出を果たしました。
棋王戦
棋王戦は共同通信社が主催しているタイトル戦です。
共同通信社は新聞社ではないので、棋王戦の記事は同社と契約している地方紙*3や雑誌*4に掲載されます。
かつて、地方紙に連載される棋戦には、「最強者決定戦」と「古豪新鋭戦」がありましたが、
最強者決定戦は1974年に棋王戦へ変更され、翌1975年からタイトル戦に昇格しました。
棋王戦は、名棋戦(旧古豪新鋭戦)と天王戦を吸収して現在に至っています。
棋王戦の方式は、
からなります。
棋王戦ならではの特徴は、挑戦者決定トーナメントの準決勝以上に敗者復活戦があることです。
準決勝の敗者2名が対局し、その勝者が決勝の敗者と対局し、
敗者復活戦の勝者はトーナメント優勝者と挑戦者決定戦を行います。
ここで優勝者は1勝、復活者は2連勝することで棋王への挑戦権を得るわけです。
*3 地方紙 … 京都新聞や中国新聞、山陽新聞などに掲載されている。
*4 雑誌 … 「週刊実話」に掲載されている。
王将戦
王将戦はスポーツニッポン新聞社と毎日新聞社が主催しているタイトル戦です。
1950年に発足し、翌1951年にタイトル戦に昇格しました。
王将戦の方式は、
からなります。
王将戦が設立された直後は、「三番手直り」の「指し込み制」という制度が存在していました。
これは、七番勝負において一方が相手に3勝差をつけると、次の対局から香落ちと平手を交互に指し、
第7局まで必ず実施するという仕組みです。
実際、1951年の第1期王将戦では、升田幸三・八段が木村義雄・名人を4勝1敗で指し込み、
第6局は香落ちで指されることになりました。
しかし、名人の権威を失墜させる制度への不満を抱いていた升田は、
新聞社や旅館から冷遇されたことに腹を立て、この対局を拒否してしまいます。
これは後に「陣屋事件」と呼ばれるようになりました。
また、1955年の第5期王将戦では、挑戦者の升田が第1局から3連勝して大山康晴・名人を指し込みます。
続く第4局の香落ち戦でも升田は勝利し、
「名人に香車を引いて勝つ」
を実現しました。
棋聖戦
棋聖戦は産経新聞社が主催しているタイトル戦です。
1962年から開始され、1994年までは前期(6~7月)と後期(12~2月)の年2回開催されていました。
1995年からは年1回の実施となり、現在の方式は、
で行われています。
2008年まで、7大タイトルの序列において棋聖戦は竜王、名人に次ぐ第3位でした。
しかし、2010年には第7位へと大きく後退しました。
タイトル戦の序列は契約金の多寡で決定されるため、これは棋聖戦の契約金が大幅に減少してしまったことを示しています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
こうして見ると、1年の間に様々なタイトル戦が開催され、将棋ファンを楽しませてくれます。
羽生さんの永世七冠達成や藤井聡太くんの活躍など、明るい話題でにぎわっている将棋界。
将棋ファンの一人として、この歴史あるゲームが、これからも人々に愛され続けていくことを願っております。
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