2017年12月、将棋の羽生善治さんが竜王のタイトルを獲得し、永世七冠に輝きました。
タイトル戦というのは、新聞社などがスポンサーとなって開催しているトーナメント戦のことで、現在、
名人戦
叡王戦
王位戦
王座戦
棋王戦
王将戦
棋聖戦
の8つのタイトルがあり、叡王戦を除く7つが7大タイトルと呼ばれています。
これらのタイトルは、一定の回数連続または通算で獲得すると永世称号が与えられ、
羽生さんは全てのタイトルで永世称号を手にすることに成功しました。
今回は、この将棋界の8大タイトルについて、それぞれにどのような違いがあるのか見ていきたいと思います。
将棋の各タイトルの違い
竜王戦
竜王戦は読売新聞社が主催しているタイトル戦です。
初めは「九段戦」として登場しましたが、その後「十段戦」に名称が変わり、1988年に「竜王戦」となりました。
8大タイトル戦の中で、最も優勝賞金が高額の4320万円で、準優勝でも1620万円が与えられます。
竜王戦のスケジュールとしては、毎年11月頃から1~6組に分かれたトーナメント戦(竜王ランキング戦)が始まり、
翌年の夏に本戦トーナメントによって挑戦者が決められ、
10~12月に竜王戦七番勝負によって竜王が決定されます。
七番勝負は全国各地の旅館やホテル、時には海外でも行われ、先に4勝した方が新竜王となります。
持ち時間は8時間あるので、1局を2日間に分けて指す方式となっています。
竜王戦はその仕組みから、若手や女流棋士、アマチュアにも奪取のチャンスがある棋戦です。
実際、羽生さんも初めて獲得したタイトルがこの竜王で、そのときの年齢はまだ19歳でした。
名人戦
名人戦は毎日新聞社と朝日新聞社が共催しているタイトル戦です。
江戸時代において、将棋の名人は世襲制でした。
しかし、十三世名人の関根金次郎が引退を表明したことをきっかけに、
1937年から名人戦が始まり、木村義雄が初代実力制名人になりました。
このように、名人という称号は、江戸時代から続く長い歴史を持っていることが分かります。
名人戦の賞金については非公開となっていますが、1991年当時の優勝賞金は1200万円で、
さらに名人になると、毎月100万円の名人手当が出ていたようです。
これは、名人になると名人戦の予選である順位戦に参加できなくなるため、
対局料収入が減少することを防止するためのものです。
これらを含めると、名人の賞金は、年間で、
1200万円+100万円×12か月=2400万円
ぐらいになりますね。
順位戦は、A級・B級1組・B級2組・C級1組・C級2組の5つのクラスに分かれたリーグ戦で、
例年6月から翌年の3月にかけて実施されています。
新しくプロになった棋士はC級2組からスタートし、上のクラスを目指します。
リーグ戦で良い成績を上げれば昇級しますが、成績が悪かった場合は降級です。
A級で最も勝ち数が多かった棋士が名人に挑戦権することができます。
飛び級などの制度は存在しないため、名人に挑戦するまで最短でも5年かかってしまいます。
名人を決定する戦いも竜王戦と同様に七番勝負で行われ、第1局は椿山荘、
その他は全国の旅館や料亭、文化施設などで開催されています。
持ち時間は9時間もあり、こちらも竜王戦と同じく2日間かけて指されます。
これは将棋界で最も長い対局時間なので、棋士にとっては気力・体力勝負です。
叡王戦
叡王戦は、株式会社ドワンゴ(ニコニコ動画などのサービスを展開)が主催しているタイトル戦です。
叡王戦が始まる以前は、プロ棋士対コンピューター将棋の団体戦である電王戦が行われていましたが、
2016年に本棋戦が発足してからは、優勝者がコンピューターソフトと電王戦で対局する形式となりました。
ところが、この電王戦も2017年をもって終了し、2018年の第3期から叡王戦は全棋士が参加するタイトル戦へと昇格されました。
叡王戦の序列は竜王戦・名人戦に次ぐ三位とされていますが、優勝賞金は公表されておりません。
叡王戦の方式は、まず段位別予選が行われ、その後の本戦トーナメントを経て挑戦者が決定し、
前期叡王との七番勝負によって新叡王を決めることになります。
叡王戦の七番勝負独自の特色としては、他の棋戦では見られないチェス・クロック方式*1の変則持ち時間制を採用していることです。
これは、「第1・2局」「第3・4局」「第5・6局」のいずれかに、「各1時間」「各3時間」「各5時間」が割り当てられ、
組み合わせは振り駒の結果に基づき、対局者が選択します。
対局の様子は新聞記事ではなく、ニコニコ生放送で中継されるという点がドワンゴらしいです。
*1 チェス・クロック … 1台に2つの時計がついており、自分側のボタンを押すと自分の時計が止まり、相手の時計が動き出す仕組みになっている。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
竜王戦・名人戦・叡王戦のそれぞれに固有の特徴があることが分かりますね。
記事が長くなってきたので、残りの王位戦・王座戦・棋王戦・王将戦・棋聖戦については、
次の記事で解説したいと思います。
引き続き、よろしくお願いいたします。
次の記事 → 将棋のタイトルの違いを解説。王位・王座・棋王・王将・棋聖とは?
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