コンピューター将棋がプロを負かすほど強くなったり、
デビューしたての新人プロが30年ぶりに連勝記録を塗り替えたり、
何かと話題になっている将棋界。
こうしたニュースが流れるとき、「竜王戦」とか「名人戦」といった言葉を耳にしますよね。
これらは、「タイトル戦」と呼ばれる試合になるのですが、
今回は、このタイトル戦について、その違いや賞金、序列についてお話しようと思います。
■ タイトル戦とは?
まず、将棋の試合のことを「棋戦(きせん)」といいます。
この棋戦は、対局結果が記録に残る「公式戦」と、記録に残らない「非公式戦」に分かれます。
たとえば、企業が女流棋士を招いて開催するイベントなどは非公式とされていることが多いようです。
一方、公式戦のほうは、さらに「タイトル戦」と「一般棋戦」に分かれます。
一般棋戦で有名なのは、「テレビ将棋トーナメント」ですね。
そして、私たちがよく耳にする「竜王戦」や「名人戦」は、このタイトル戦に当たります。
1983年以降、タイトル戦は「七冠」と呼ばれる
□ 名人戦
□ 王位戦
□ 王座戦
□ 棋王戦
□ 王将戦
□ 棋聖戦
の7つが開催されてきました。
しかし、2017年に「叡王戦(えいおうせん)」がタイトル戦に昇格したことで、タイトル戦の数は8つになりました。
■ 賞金
将棋のプロのことを「棋士(きし)」と呼びますが、棋士は対局をすることで対局料をもらっています。
この対局料は、どこから出ているかというと、棋戦を主催しているスポンサーからですね。
叡王戦以外のタイトル戦については、主に新聞社や通信社がスポンサーになっています。
なぜ新聞社がタイトル戦を主催しているかというと、新聞には将棋欄がありますよね?
そこに将棋の記事を載せるためです。
そして、タイトル戦を勝ち抜き、見事優勝した棋士は、通常の対局料のほかに高額な賞金も獲得できます。
気になるその賞金の金額ですが、残念ながら竜王戦以外のタイトル戦については非公表となっています。
しかし、棋士たちが年間で獲得した賞金・対局料からある程度は推測することができますので、ここではその推定額を載せておきます。
▼ タイトル戦の優勝賞金ランキング(竜王戦以外は推定)
第1位:竜王戦(4,320万円)
第2位:名人戦(2,500万円)
第3位:叡王戦(2,000万円)
第4位:王位戦(1,000万円)
第5位:王座戦(700万円)
第6位:棋王戦(500万円)
第7位:王将戦(300万円)
第8位:棋聖戦(300万円)
■ 序列
次に、タイトル戦の序列についてですが、こちらについては、
優勝賞金ランキングと同じ
です。
優勝賞金が多いタイトル戦ほど、格上として扱われるわけですねー。
どんな世界でもそうかもしれませんが、
金を出した人が偉い
わけですよ。
何とも世知辛い話ですが、仕方ありません。
…が、しかし、ですよ。
将棋には長~い歴史があります。
特に「名人」については、織田信長が任命した本因坊に始まり、
江戸時代の家元名人制や明治~昭和の一世名人制を経て、
現在の実力名人制へ移行してきたのです。
「名人」という称号に特別な思いを持っている棋士や将棋ファンは決して少なくないはずです。
■ まとめ
ということで、竜王と名人の違いを簡潔に言えば、
賞金が最も高いのが「竜王」
歴史が最も長いのが「名人」
ということになります。
また、「叡王」については、予選を勝ち抜いた挑戦者がタイトル保持者と番勝負を行う点は他のタイトルと同じですが、
見事優勝すると人類代表としてコンピューター将棋の優勝プログラムとの勝負が待っています。
もっとも、最近はコンピューターがあまりにも強くなってしまったので、コンピューターが駒を落として対局する形へと変化していくのかもしれません。(プロにとっては屈辱ですが…)
▼ 追伸
叡王と優勝プログラムとの勝負「電王戦」は今期限りで終了することが2017年2月22日に発表されました。
お詫びして訂正いたします。
コンピューターが強くなりすぎたとはいえ、人間とコンピューターの戦いが見られなくなるのは、少し寂しい気もします。
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コメント
名人戦が最高峰ではないのですね。賞金がランクを決めるのであれば、時のスポンサーが最高峰を決めるという事になりますが。それって、何か商業主義的で将棋の品位を下げませんか。私としてはとても残念の一言です。
> 佐々木さん
コメントありがとうございます。
・連盟書状では会長、名人、竜王の順で署名する。
・昇段規定では順位戦が竜王戦より重んじられる。
という面が残っているので、名人は現在でも将棋界の最高峰と言ってよいと思います。
竜王戦も、かつて九段戦、十段戦と呼ばれていた名人に次ぐ歴史のある棋戦です。
賞金だけでランクが決まってしまうのは、私も反対です。
名人や竜王を上回るランクの棋戦が出てこないよう、連盟やスポンサーも配慮しているようです。