O157による食中毒事件が、ときどきメディアで報道されます。
原因はメンチカツだったり、ポテトサラダだったり…。
ところで、このO157とは、一体どのような病気なのでしょうか。
今回の記事では、
・その原因と感染経路
・具体的な症状
・ベロ毒素とは?
・他の食中毒との違い
・O157の治療と予防
についてお話したいと思います。
■ O157とは?
私たちの体内にも存在する大腸菌。
その多くは人体にとって無害ですが、中には下痢を引き起こす「病原性大腸菌」も存在します。
病原性大腸菌には4種類あり、そのうちの「腸管出血性大腸菌」の代表が O157 なのです。
その名前の由来は、
「O」は抗原*1の種類、
「157」はその抗原が発見された順番、
を表しています。
*1 抗原 … 免疫反応を引き起こす物質。細菌やウイルスなど。
また、O157には以下のような特徴があります。
・温かく栄養分と水分のある所で増殖する。体内では大腸で増える。
・低温に強く、冷蔵庫の中でも生きる。
・酸性に強く、胃酸の中でも生き残る。
・熱には弱く、75℃・1分間の加熱で死んでしまう。
・逆性石鹸やアルコールなどの消毒薬でも死滅する。
■ 原因と感染経路
O157は普段、家畜(牛、羊、豚など)の大腸に住んでいます。
それが家畜の糞便とともに外に出され、糞便によって汚染された水や食物を口にすることで、感染します。
また、患者の糞便に触れた後、菌が口に入っても感染します。
このように、O157は食品や便から感染するので、空気感染(せき、くしゃみ)によってうつることはありません。
■ 具体的な症状
O157に感染すると、4~8日の潜伏期間の後に、激しい腹痛を伴った水様便(水みたいな便)が何度もあり、
やがて、血便が出るようになります。
また、一時的に発熱することもあります。
O157が怖いのは、O157が作り出すベロ毒素が、溶血性尿毒症症候群(HUS)や 脳症 を引き起こすことです。
それぞれの特徴を以下にまとめます。
▽ 溶血性尿毒症症候群(HUS)
・下痢、腹痛から数日~2週間後に起こる。
・顔色が悪くなる。
・腎臓のはたらきが低下する(尿の量が少なくなる)。
・むくみ
・中枢神経症状(眠気、幻覚、けいれん)
・赤血球が壊れて貧血になる。
・血小板数が少なくなり、出血しやすくなる。
▽ 脳症
・頭痛
・眠気
・口数が増える。
・幻覚
・けいれん、昏睡
このように、溶血性尿毒症症候群や脳症が現れると、治療が難しく、
大変危険な状態になります。
特に抵抗力の弱い子供や高齢者の場合、死亡するケースもあります。
■ ベロ毒素とは?
O157が作り出す毒素で、わずかな量でもベロ細胞*2を殺してしまうのが名前の由来です。
細胞がタンパク質を合成するのを妨げ、細胞を死に至らせます。
腎臓や脳、肺、大腸への影響が大きく、
大腸をただれさせ、血管壁を破壊して出血を起こします。
O157と同様、熱に弱く、80℃・10分間の加熱で活性をなくします。
*2 ベロ細胞 … アフリカミドリザルの腎臓の細胞
■ 他の食中毒との違い
O157と他の食中毒の違いは以下の2つです。
▽ 感染力が強い
他の食中毒(サルモネラ菌など)は、100万個以上の菌が体内に入らないと食中毒が起こりませんが、
O157は100個程度の菌が体に入っただけで病気を引き起こします。
▽ 潜伏期間が長い
他の食中毒(サルモネラ菌など)の潜伏期間は5~72時間ですが、
O157のそれは4~8日間と長くなっています。
これは、O157が大腸内で増殖してから毒素を作るためです。
■ O157の治療と予防
▽ 治療
O157の治療ですが、成人の場合、特に何もしなくても5~10日間ほどで症状はなくなります。
病院では、菌が増えないように抗生物質を投与し、安静を保つ治療法が採られているようです。
下痢をしている間は、水分をこまめに補給し、消化の良い物を食べるようにします。
また、下痢止めは菌を大腸内に残してしまうので、使用しないでください。
症状がなくなった後も、2週間ぐらいは菌が便の中に出てくるので、
引き続き消毒などの予防に心がけ、旅行や水泳などは控えましょう。
▽ 予防
O157に感染しないための予防法ですが、まず第一に、
「十分に加熱された物を食べる」
ということです。
特に、ハンバーグやメンチカツなどは、内部まで十分に火を通すようにしてください。
そして、菌が増殖する時間を与えないために、調理した料理は冷蔵庫で保管せず、
すぐに食べてしまいましょう。
また、調理の際には、手と器具を清潔に保つことが大切です。
調理前や用便後の手洗い・消毒を徹底し、
使用した調理器具は洗剤でよく洗い、熱湯をかけて消毒します。
トイレについては、特別な消毒液は不要ですが、水で薄めた漂白剤が消毒液になるので、
取っ手やドアノブ、蛇口を消毒しておくと安心です。
もちろん、清掃後の手洗いも忘れずに。
家族に患者がいる場合は、患者の糞便で汚染された衣服は煮沸や薬剤で消毒し、
家族の物とは別に洗濯するようにします。
また、患者と子供との混浴は避け、患者は最後に入浴するようにします。
■ まとめ
いかがでしたでしょうか。
O157は感染すると命にも関わる恐ろしい菌ですが、
私たちの心がけ次第で、ある程度予防ができるものです。
特に、消費者に食品を提供する食品メーカーやお惣菜屋さんには、
安心・安全でおいしい食べ物を作ってほしいと思います。